胃アニサキス症
余程の胃潰瘍でも無い限り、胃の痛みはそれ程強いものではありません。
しかし、突然の激痛が長く続くとき、何を食べたかが重要になることがあります。
その一つが、胃アニサキス症です。
【アニサキスとは?】
アニサキスは、イカや鮭、青魚に特に多く寄生しています。
寿司・刺身など、生で食べた後に数時間で起こります。
冷凍してしまうと死んでしまうのですが、酸には強く、酢じめ程度では死にません。
通常イカの刺身は一度冷凍することが多いのですが、生で食べるときは、注意が必要です。自分で釣って普通の刺身で食べるのは、とても危険です。
アニサキスは体長2cm程で、透明の糸くずの様です。体に傷がつくと死んでしまいます。そのため、職人はイカの刺身には切れ目を多く入れたり、イカそうめんのように細く切るのです。体の一部でも切られてしまえば死んでしまいますから、生で食べるための知恵ですね。
【アニサキスに遭遇するのは?】
胃アニサキス症が一番多いのは鯖寿司です。当地では、秋のお祭りのシーズンに多いです。鯖寿司ではアニサキスが切られずに生き残っている事が多いのです。よくよく噛んで食べれば、アニサキスに傷がつき死んでしまいますが、あまり噛まずに飲み込むと、無傷のまま胃の中に入ってしまうのです。
実は、人間の胃には寄生できないため、そのままでも1週間もすれば死んでしまいます。ただ、その間、アニサキスは必死で胃から逃げだそうとして、胃に食いつき、アニサキスが死ぬまでは痛みが続くのです。運悪く胃では無く、十二指腸のような壁の薄い所で食いつかれると、腸管に穴を空けてしまい、腹膜炎を起こすこともごくまれにはあります。
【痛みの原因はアレルギー反応】
糸くずのような虫で痛みが出るのは、実は食いつかれるからではありません。こんな小さな虫に食いつかれても痛くはありません。意外なことに痛みが出るのは、2回目の感染以降なのです。
寄生虫が入ってきた時に攻撃するのは、白血球の中の好酸球なのですが、初感染の時は、アニサキスを異物と即認識できず、まず異物と学習します。そのため、気づかれないことが多いです。
2回目からはワクチン接種後のようにすぐ異物だと認識しますので、一気に好酸球が集まってきます。その好酸球がアニサキスを攻撃する時に出す抗炎症物質のために、激しい痛みが起こるのです。
内視鏡で見ると、局所的に赤くなった粘膜があります。好酸球が集まり、炎症反応を起こしているからです。その真ん中に、糸くずのようなものを見つければ、アニサキス症だと診断できます。体の1/3くらい胃壁に食いついています。
治療は、鉗子で虫体をそっとつまみ、ちぎれないようにゆっくしと引き抜きます。抜くとすぐに痛みは治まりますが、ちぎれてしまうとしばらく痛みが続いてしまいます。
ちなみに、生サバで蕁麻疹が出る人は、自分がサバアレルギーだと思っているかも知れませんが、サバアレルギーだと、生サバを食べれば毎回蕁麻疹が出るものです。アレルギーが出たり出なかったりする人、他の青魚でも出る人は、アニサキスアレルギーだったりするのです。
当院で3回もアニサキスを摘除した、鯖寿司が大好物な強者もおられます。
私も鯖寿司は大好物です。青魚のお刺身も、よく噛んで食べれば大丈夫ですので、ゆっくり味わって食べましょうね。(^^)